【今後の労働基準法の動向~労働基準関係法制研究会 第14回資料より~】

11月12日、労働基準局で第14回労働基準関係法制研究会が行わました。
11月20日現在、まだ議事録は発表されていませんが、前日の11日に「議論のたたき台」が公表されています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001330213.pdf
今後、労働基準法はどうなっていくのか?
そして日本の「働き方」はどうなっていくのか?注目していきたいと思います。

まず、現代における労働基準法の「労働者性」についての課題
労働者性、つまり労働基準法が適用される人がどういう人なのか?という基準を見直そう、という話です。

「労働者性」の判断基準については、作成から約40年が経過しています。
働き方の変化・多様化に、必ずしも現代の実態に対応できていない部分が生じており、見直しの必要性を検討していくべきとされています。

具体的に必要性が実感できる例として、
・多種多様な働き方が増え、労働者性の境界に位置するような働き方も増加している
・テレワーク等の場所にとらわれない働き方も拡大している
・労働者に近似したギグワーカーやプラットフォームワーカーが世界中で拡大している
・AIやアルゴリズムによる労務管理のデジタル化なども進展してきた
などの理由があり、労働者性判断のわかりにくさが増大してきているのです。

その他、この「ただき台」には、労使コミュニケーションの在り方についてが多く記載されています。
労働組合の組織率が低く過半数代表のなり手もなかなか確保できない状況です。
そのなかで、いかに過半数代表者に対する情報提供・便宜供与等の企業からの支援を制度上明確にしていくか、がこれからの課題となります。
企業は過半数代表の選出に直接関与してはいけませんが、過半数代表の意義や役割、労働者の意見集約の手法などについて、労働者が知識を得る教育・研修の機会が必要と考えられることから、その機会提供の担い手は企業となり、今後の企業の立ち位置やかかわり方が変化していきそうです。

また、労働時間法制の具体的課題についても記載されています。
その中で、私が注目したものをいくつかご紹介します。

①時間外・休日労働時間の上限規制
既に時間外・休日労働時間の上限規制は行われていますが、2017年の労使合意で掲げられた長期的な目標である月45時間、年360時間を見据え、定期的に時間外・休日労働等の実態を把握し、上限規制の水準の見直しについて議論することが必要と考えられています。

②企業による労働時間の情報開示
企業内外への時間外・休日労働の実態について、企業自ら正確な情報を開示することが望ましいとされています。

弊所の顧問先様の中で、個別の従業員に対して、各人の労働時間の情報を開示して労働時間の現状を知っていただいた上で「比較的余裕のある時期は年休を取りましょう」「この時期は〇時には帰れるよう、業務調整をお願いします」などの声掛けをしていただいている企業様も多くいらっしゃいます。
ただただ「残業しないように!」とするのではなく、実態を把握したうえで対策を講じることは何をするにしても大切ですね。

③テレワークの柔軟な働き方
テレワークの実態に合わせた「コアデイ」を設けたフレックスタイム制を導入することで、テレワークと通常勤務日が混在する場合にもフレックスタイム制が導入できるようになります。フレックスタイム制の導入促進にもつながると考えられ、検討されています。
また、テレワーク時に利用可能なみなし労働時間制も検討されていますが、長時間労働のリスクも指摘されており、ニーズ等を把握したうえで中長期的な検討が必要とされています。

働き方改革関連法での労働時間規制は、時間外・休日労働時間の上限規制が中心です。しかし今回、労働からの解放の規制についても改めて整理・検討を加えられました。
「労働からの解放の規制」では、休憩・休日・勤務間インターバル・つながらない権利・年次有給休暇について記載がありました。
特にインパクトがあったのは、「13日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を労働基準法に設けること、というものです。
現在は、基本的には36協定に記載の回数までは、休日割増賃金を支給することで法定休日に労働をさせることができます。
しかしこの規定ができると、例えば日曜日を法定休日としている事業場の場合…
(日)休み
(月)出勤
(火)出勤
(水)出勤
(木)出勤
(金)出勤
(土)出勤
(日)出勤
(月)出勤
(火)出勤
(水)出勤
(木)出勤
(金)出勤
(土)出勤 ←ここまでで13日連続出勤
(日)必ず休みに!
(月)…

(日)は絶対に休日労働ができません。
2週間(14日間)丸々(連続)の労働ができなくなります。
連続労働日数の上限を見直すことで、健康・安全・衛生面の確保がなされる狙いのようです。


以上、まだまだ論点は多くあり、紹介したいことも多々あるのですがこの辺で。
引き続きよろしくお願いいたします。

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